知らない土地の知らないお店で出会う素敵なランチ【魚治 うおじ】あきる野市

私は電車は嫌いだ。パーソナルスペースは無いし、あの狭い空間で知らない人達が吐いた息を自分が吸わないといけないのが非常に気持ち悪い。

そんな私が電車に乗らないといけない用事ができてしまった。最悪だ。しかし、どうせ乗るなら全く知らない土地に行ってみよう。そう思いGoogleマップを開き行き先を決める。

目次

西東京の終着駅「武蔵五日市駅」

目的地を決め電車に乗り込む。平日の昼間とあって思いの他空いていた。座席もちらほら空いていたが、知らない人が座った席を座ってお尻同士お尻合いになるのは少し気が引けるのでそのまま立つ事にした。少し型遅れの列車、乗降時にボタンを押して開く扉は珍しい。この辺りは雪が積もるのかな。車窓から景色を眺めようとしたが、これといって変わらぬ景色だったのでスマホに目を向けることにした。

「次は終点武蔵五日市」

車内アナウンスが聞こえたので降りる準備をする。小さな改札口を抜けると目の前にはコンビニ、左手にはバスロータリー

なんだ普通の駅じゃん

無人駅のようなレトロな駅を期待していた私は少しがっかりした。とはいえ、せっかく来たのだから街を散策してみることにしよう。

檜原街道という道に出ると、自分が新緑の山々に囲まれているのを知った。知らない土地、知らない駅、知らない景色、テンションが上がらない訳がない。とりあえず、人通りが多そうな方へ進んでみる。時刻は午前11時をまわった所、朝食を食べていなかったので少し早いお昼を食べる事に決めた。またまたGoogleマップさんにお店を探してもらうと近くの蕎麦屋とラーメン屋を紹介された

蕎麦か。いいな。

メニューと口コミを調べるとコスパはかなり悪いらしい。コスパが悪いのが嫌いな私は別の店を探した。

すると、少し先に寿司屋とほうとう屋とピザ屋が表示される。

この3択か。寿司屋なんて何処にでもあるし、ほうとうは山梨の物だし、ここに来てピザなんて食いたくないしな〜。でもこの3つの中から選べって言われたら寿司か〜。こんな山奥で寿司なんて食いたくないけどな〜。ほうとうとピザに比べたらまだマシか。

消去法で選んだ寿司屋を調べてみると、寿司以外にも天ぷら定食があるのを知る。

完全に蕎麦の口になっていたけど、天ぷらがあるならこの店にするか。値段もさっきの蕎麦屋に比べたらまだ安いか。

さっきまでテンション上がっていたのに急に足取りが重くなったが寿司屋へ向かう。

寿司か〜。蕎麦がよかったな〜。でも蕎麦高いからな。蕎麦にあの値段出すなら天ぷら食べた方がコスパいいしな〜。

檜原街道という道はダンプカーがバンバン通る。しかもかなりのスピードを出しているので危ないしうるさい。自然豊かな場所なのでゆったりとした時間が過ごせると思ったがダンプカーのせいで台無しだ。一体何十台のダンプが1日に行き交うのだろう。この通り沿いに住んでる住人が頭を悩まされていることは容易に想像がつく。

こだわりの詰まったランチが食べられる【魚治(うおじ)】

そんな事を考えながら歩いているとお店らしき建物の前に着いた。ぱっと見、民家のような建物だが店先には小さなメニュー表看板が出ている。

間違い……ないかな?個人店だと緊張するな

半信半疑の気持ちで入口を覗きこむと女将さんらしき人が出迎えた。

予約してます?

第一声が予約の確認。つまり、予約しないと入れないのか。そうなるとまた店探しをしなければいけなくなるので面倒だ。

予約してません。1人です。
どれくらいお時間かかりそうですか?

えーっとね、30分くらいかな。

大丈夫です。

そう言うと座敷に案内された。

今お茶もってくるからちょっと待ってて。あっ、お水もあるけどお茶でいい?

お茶をお願いします。

こちらの女将さんの話方は料理家の平野レミさんに似ている感じ。

程なくすると、お茶、おしぼり、メニュー、ベルを渡された。………ん?ベル!?何に使うのか戸惑っていると、注文が決まったらベルで呼び出すらしい。

いや!この近距離でこんなデカいベルいる!!??

心の中でツッコミをいれ「チリンチリン」とベルを鳴らし天ぷら定食を頼んだ。

魚治 うおじ メニュー

お店の中には地元のマダム達が2組食事を楽しんでいる。このマダム達は常連らしく女将さんと仲良さそうに話をしていた。たまたま耳に入ってくる会話の内容を聞くと、こちらのお店魚治(うおじ)は4人の従業員で営業しているが大忙し。

あと1人バイトを雇いたいが、食器の洗い方にこだわりがあるらしく、4つのスポンジを使い分けて洗ってくれる子じゃないと雇えないとの事。

都心なら見つかりそうだけど、こういう場所だとそこまでのクオリティの子を募集するのも大変そうだな。

そんな会話を小耳に挟みながら湯呑みに手をかける。

ほぉ。確かにいい湯呑みだ。よく分からんがなんか良さそうな陶器の質感だ。

熱々渋めのカテキンが五臓六腑に沁み渡る。とにかく魚治(うおじ)は色々とこだわりを持っているお店なのだ。

調味料も添加物は使用していない物を取り入れたり、しゃりも客に合わせて酢を調整してくれるとの事。そんなオーガニックにこだわったお店ならきっと味も薄いだろうな。バカ舌の私は少し後悔した。

はい。じゃこの中から好きなお箸と箸置き選んでくださいねー

女将が何を言っているのか意味が分からなかった私は運ばれて来た物に目をやる。お盆には箸と箸置きが何種類か置かれていた。

なるほど。こちらのお店は食事をする前から客を楽しませる粋な演出をする訳だ。こりゃ女性客には嬉しいサービスかもしれないな。

だが私は男、正直何でも良かったがせっかくのサービスなので綺麗な箸入れに入った箸とかわいいお花の箸置きを手に取った。なんと、このお花は造花ではなく生花だったのだ、小さいながらもしっかりと花の匂いがし、ビーカーのような形をした箸置きの中には水も入っている。これはこだわりが凄い。辺りを見渡して見ると卓上や窓側などにフラスコのようなガラスに生花が飾ってある。

これもこだわりか!これだけこだわりが強いお店ならば従業員も生半可な気持ちで仕事できない。きっと最初はプレッシャーの毎日だったろう。しかし、今では自分も他には譲れないこだわりを持つ事ができる人間に成長させてもらいました!女将はん!ありがとう!

そんな事を想像していたら料理が運ばれてきた。

天ぷらセット 1210円

魚治 うおじ 天ぷらセット

こちらの食器もこだわりが凄い。どうしても料理より先に食器に目がいってしまう。だいぶ話が長くなったしまったが、これからやっと天ぷらセット1210円をいただきます。
天麩羅はにんじんかき揚げにしゃっきしゃきのいんげん、一口サイズの茄子と中まで蒸されたしっとりしたエビ、さつまいも、苦味のない春菊?かな?そして臭みがなく、しっとりとしたいわし。

これを天麩羅つゆにダイコンおろしを混ぜていただく。意外にも薄味ではなかった。私がいただいた中で1番美味しかったのはもずくのお吸い物。ものすごく出汁の味が効いていて、今まで飲んできたお吸い物の中で1番美味しかった。正直、天ぷらセットで1210円は高い気もしていたが、これまでのサービスやこだわりを考えるとコスパいいと思う。

最後トイレに寄って帰ろうとしたが、立って用を足したらきっと女将さんに不快な思いをさせてしまうかもしれないと思い、そのまま会計を済ませ店を後にした。

こちらのお店は入るのに少々勇気がいるが、女性にはとても良いお店だと思う。ぜひ皆さんも大切な人と一緒に女将のこだわりの詰まったお店で美味しいお吸い物を飲んでみて下さい。

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