ひと昔前に冬のソナタが流行った頃、私は韓国ドラマに全く興味がなかった。それから韓国ブームが始まり、やれK-POPだの、やれ韓国料理だの、やれ韓国旅行だの、化粧品だの、世間はもう韓国ですごかったのを覚えている。
それなのに、当時の私には興味が湧かなかった。なんでだろう。きっと、なんとなく恥ずかしかったのだと思う。流行りに乗ったらミーハーだ、私は周りに流されない信念をもった人間である。そう自分に言い聞かせていたのかもしれない。
それから数年が経ったある日の朝、何の気無しにテレビをつけてみたら、韓国ドラマがやっていた。途中からだったのであらすじは分からなかったが、BGM程度にぼーっとみていたら、(おや?楽しいかも)と思い始め、次の日も、またその次の日も、見進めて行くたびにどんどんハマっていってしまった。
確か、キムタックという作品だったと思うが、悪ガキだった少年が、ジャムおじさんらしき人の元で修行をし、ライバルの次長課長の井上に似ている少年と、パン作りの勝負をする。みたいなドラマだったと思う。
私は、この作品を見てから韓国ドラマの面白さに惹かれていったのだ。
キムタックが終わった後も、検事プリンセスや、コーヒープリンスなど、朝の韓国連続ドラマを録画してしまうほどハマっていってしまった。
しかし、現代社会のドラマにはハマったが、時代劇作になると、言ってる意味が分からないので、それに関しては今もハマる事ができない。日本の時代劇作でさえも、言ってる意味が分からないので、韓国時代劇は更にチンプンカンプンだ。
そんなある年、私はコロナウィルスにかかってしまい、10日間自宅療養の期間が出来てしまった事があった。人生で1番暇な時期だったので、さてと、韓国ドラマでも見るか。と思い、人気の韓国ドラマを調べてみた。とあるサイトで1位になっていた、トッケビという作品がプライムビデオで見られるので、早速見てみた。第一話は時代劇だったので、「なんだ、生まれる前の戦国時代の話かよ。」と見るのを躊躇ったが、とにかく暇だったので、(まぁ、とりあえず見てみるか。)と我慢して見進めて行くと、第3話から急に楽しくなってきて、あれよあれよと、どハマりしてしまった。
その結果、トッケビを見終えてしまった時、私の心にポカンと穴が空いたような感覚に陥り、トッケビにロスになってしまった。「アジャッシ………。」と呟きながら、何本チャミスルを飲んだだろう。もうトッケビ無しに私は生きられない。どうすればいいんだ。………あっ、そうか。私がトッケビになればいいんだ。
盲点だった。自分がトッケビになれば、空いた心を埋められる。
自宅監禁が解かれた次の週、早速私はニトリにいって、トッケビが履いていそうなスリッパを買い、その後、1000円カットに行き、トッケビみたいな髪型にしてもらい、そして、スーパーに行き、ステーキ肉を買った。だが、これだけではトッケビになれないので、100均でおもちゃの剣を買って、それを半分に切って胸に貫通させて、夕飯にステーキを食べた。
それから1年が過ぎ、世界はコロナ前と同じ生活を取り戻した。私の方も、自分がトッケビだった事を忘れ、普通の生活を取り戻していた。
ある晴れた秋の日の事。千葉県にある、津田沼という街をプラプラと散歩していると、一軒の小さな韓国料理を発見した。その瞬間、脳内でトッケビのあの音楽、そう、“Stay With Me”が流れてきた。(…な、なんなんだ、この感覚。……!?……せや!ワイ、トッケビやったんや!)
気がつくと、店の中に入っていた。自分で扉を開けて入ったのか、それとも、扉をそのまま貫通して入ってきたのか覚えていない。
独特の匂いがする店内の席に着き、メニュー表を確認する。サムギョプサルや、参鶏湯、ビビンバ等、豊富な種類が用意されている。
とりあえず、韓国料理といったら、ドラマでよく見る辛ラーメンだろう。
という事で、本場韓国式辛ラーメンランチセット(ライス+本日のおかず+サラダ+カクテキ)1.000円を注文した。
内装は、本場韓国にありそうな造りをしているので、本格的な韓国料理なのかな?と期待が高まる。BGMは流れていない。これも本場の韓国式なのか、と納得してしまう。
おしぼりをいただいたが、お冷が出てこない。本場の韓国はお冷出てこないのか?そういえば、お冷が出てくるのは、日本独特のサービスだと聞いた事がある。
これも本場韓国式に寄せた店造りって訳か。まさか津田沼の辺鄙な路地裏で、こんな本格的な店があるなんて思いもしなかった、これはいい店を見つけてしまったようだ。だんだんと期待が高まる。
葉っぱともやしとキムチが運ばれてきた。(あっ、そういえば韓国では食事を頼むと、小鉢が沢山サービスで出されるって聞いた事あるぞ。)っと、いうことは、これがサービスの小鉢達か!ありがたい。
独特の味がするキムチ。日本のスーパーで売っているキムチの味とはやはり違う。これが本場の味付けなのか。続いてもやし。もやしはシャキシャキしていてニンニクの強いナムルだ。
(そうか、本場のナムルはニンニクを沢山いれるんだな。)やはり、今まで食べてきたナムルの味とは違う。お次は葉っぱだ。
(お?これはなんだ?ドレッシングの味がする。あれ?もしかして、これってサラダ?………って事は、これがカクテキで、これが本日のおかずのナムルってこと?)
つまり、サービスで出されたと思っていた小鉢は、ランチセットの一部だったわけだ。これなら、表記しないで出してもらった方が嬉しかった。本日のおかずがナムルって………。韓国だとナムルっておかずの部類なのか。
さて、メイン料理の本場韓国式辛ラーメンが運ばれてきた。さすが、本場というだけあって、容器が韓国ドラマでよくみるアルミ鍋に入っている。これは期待が持てるぞ。……………えっと。見た目はメニューに載っている写真と随分違うな。盛り付けが美しくなくて食欲がそそられない。それに肝心の玉子が乗ってない。(まぁ、でもこれが本場の辛ラーメンなんだろう)いただきます。フーフー。ズルルル。………うん。辛ラーメンだ。そりゃそうだ。だって辛ラーメン頼んだんだもん。上に乗っているチーズを混ぜ………いや、混ぜられないから麺と絡めて食べられない。本場のチーズだとこうなのか。ペラッペラの三角形の食べ物はなんだ?韓国おでんで食べる練物か。麺をかき混ぜると奥からトッポギが出てきた。
そういえば、ライスはいつくるんだろう。ラーメンはほとんど無くなってしまい、残り1/5くらいになったところで漸くライスが運ばれてきた。本場は、最後の最後を見計らってライスを出すのか。さすが本場をこだわり抜いたお店だ。
辛い物を食べたので水が飲みたくなったが、ここまできて水をお願いするのは失礼だと思い我慢した。
聞く所によると、こちらのオーナーは韓国の方で、お店のデザインや内装、食材にこだわりがあるとの事。
私は韓国で食事をした事がないので分からないが、新大久保にある韓国店とは違い、かなり本場にこだわったお店だと感じた。
貴方も大切な人と一緒に、本場韓国の味を堪能してはいかがでしょう。
それでは良い休日を。ふぉふぉふぉ。